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大阪地裁平成7年2月23日判決

●商  品: ワラント
●違法要素: 説明義務違反、適合性原則違反、断定的判断、事後の助言・情報提供義務違反
●過失相殺: なし
●掲 載 誌: 判例セレクト2・128頁、判例時報1548号114頁
●審級関係: 控訴審にて実損のほぼ9割で和解成立

 本判決は、「自己責任の原則は、証券会社が一般投資家に対し、自己責任を負えるだけの判断材料を提供し、 投資条件を整備して初めて妥当する」との前提を示した上で、ワラントの問題点全般を的確に指摘し、「(一般投資家が) 自己の権利を守るために必要な理解をしていないような状況で、取引を勧誘し、取引を成立させるようなことは慎むべき といえる」と判示している。
 また、ハイリスク・ハイリターンであり、期限到来により無価値となるというワラント の表層的な特性のみならず、勧誘当時、本件ワラントは株価が権利行使価格を下回っており、残存期限も1年11ヶ月しか ない危険な状態にあったにもかかわらず、担当社員は原告がこのことを理解できるよう説明せず、かえってワラント価格は 株価に連動するとの誤った説明を行ったことを重視し、このことだけでも説明義務違反になるとしている。
 さらに本判決は、原告の属性全般と本件ワラントの固有の問題点から、本件勧誘は適合性原則に違反すると明示し、断定 的判断の提供をも認め、購入後の価格情報及び売却時期に関する情報提供や助言がなかったことも原告の損失に繋がったと判示して、これら一切から、全体的に違法性が強いとして過失相殺をも否定した。
 自己責任原則についてのあるべき理解を出発点として、適合性原則や説明義務、購入後の損害拡大の問題を的確に判断し た点、かような観点から、開業医であって一般的な社会経験や知識、判断能力を備えている原告との関係で過失相殺を否定 した点において、意義のある判決であると思われる。